前に買いたっけな?
まぁいいや。
切り口がたぶん違うから。
俺が社会人3年目くらいの頃だろうか。母親から電話がかかってきて、親父が不倫していると訴えてきた。
とりみだすでも、泣きわめくでもなく。「学校休みたいて言うてんねん」くらいのちょっと困ったなぁの時のテンションで言ってきた。
たんたんとダラダラと不倫の状況証拠を並べてくるが、俺は裁判官でもないし、どうにもできない。
「わかれたら?」と言ったら、少し黙ったあと、別れられない言い訳を始める。
もしもうちにくるか?と言ったらあの時本当に分かれていたかもしれない。
母親いわく職場の部下に手を出したらしいんだけど、そんなに深い仲になったわけじゃないんじゃないかな?と俺は今では思っている。
ちょっと抱き寄せたとか、せいぜいチューしたくらいだろう。
なぜなら親父はダサいからだ。
常にジャージだし。
まあ、当時はスラックスくらいは履いてたけど、洒落っけのない人だったから、がっつり口説いてジャストミートするようなことはなかったんじゃないかと思う。
母親いわく、温泉にいこうと誘う手紙が出てきたと言う。それが浮気の証拠だという話なんだけど、手紙で温泉誘うあたり、むしろこれからだったんじゃないだろうか。
もうすでにジャストミートしてたら、口でいこうぜって言うよね。
まだしてないから恥ずかしくて手紙で誘ったのだろう。
親父は60歳だった。
相手の女の子は息子の俺より若かった。
母親からするとそれはもう浮気であり不倫なのだ。一線を超えてる超えてないは関係ない。
聞かされた俺はどうでもよかった。
母親は確かに少し気の毒だなとおもったけど、それはとどのつまり彼女が呼び起こした不幸でもある。
ずっと専業主婦で経済力をつけようとしなかった。油断してたんだろう。
何をやっても母親はでていくことはないだろうという慢心が親父にはあった。
経済力が母親にあれば、もっと親父は捨てられるかもしれないリスクに怯えて、もっと慎重に行動したはずだ。
娘には絶対に経済力つけさせよう。そう硬く誓う。
ふと、接待の帰り道に思ったんだけど、親父はどんな気持ちだったんだろう。
昔はわりとモテていたらしい。
大手の会社に入り、わりと待遇もよく、母親とそこで出会う。
やがて結婚して俺が生まれる。
結婚後、大手の会社の激務に耐えかねて、少し楽な仕事に転職するが、それから30年ほど働き通しだった。
いつもジャージ着て、新しい服をほとんど買おうとしない。
裕福ではなかったけど、俺にはきちんと服を買ってくれていたな。
ずっと働いて家に帰ってテレビ見て、子供のために節約して、幸せだったのだろうか。小さな家庭は親父を幸せにしたのかな。親父には女っ気は全くなかったんだ。
ちょっとくらい親父にもいいことあってもよかったかもしれないのにな。
結局ふたりは離婚せずに残りの人生を少しずつ消耗してる。それなりに趣味をもって、時間をつぶしているのである。
親父はいつの間にか振られていたらしい。最後までやったかどうかはわからない。
親父のダメなところはバレちゃったことだ。そこは断固としてバレないように過ごさなくてはならない。
不自然な動き過ぎてバレるとか最悪やろ笑
親父はきっと浮気したかったけど、最後までできなかっただろう。ダサかったのか、相手が我にかえったのか。ハゲが進行したのか。
いずれにせよ、親が果たせなかった夢を子供である俺が引き継ごうと思う。デートは親子2代に渡っての悲願なのである。
というわけでデートのお誘いお待ちしております(・Д・)
もうええわ